トモオフィス/廃品打楽器協会

山口とものインタビュー記事が掲載されました

山口ともメディア掲載
新聞・雑誌掲載
時計2004年1月6日(火)

更正保護法人 日本更生保護協会 発行
法務省保護局 協力

「生きる力」は、きみの中にある。

朝起きてから耳に入ってくる音はすべてが音楽。
譜面なんか読めなくても、自由に音楽を楽しんでほしい。

【廃品を使って打楽器をつくり、独自の音楽活動をしている山口ともさん。見て楽しい、聴いて楽しい、叩いて楽しい廃品打楽器の数々からは、「音楽の身近さを伝えたい」という、ともさんの思いが伝わってきます。】

◆自分だけの音を出したくて始めた廃品打楽器ずくり。
ゴミから生まれた楽器には無限の可能性がある。

自分で楽器をつくり始めたのは、95年に『銀河鉄道の夜』という音楽劇の仕事をしたとき。宮沢賢治の話がとてもメルヘンチックで、既成の現実っぽい音ではなく、なんだろう、この音は?と思わせる音をつくったほうが、より一層話しがおもしろくなるんじゃないか、と思ったのがきっかけです。燃えないゴミから拾ったバケツとか、工事現場に落ちていた水道管、枝打ちして家の庭に放置してあった楠とか、ゴミの可能性にハマりましたね。たとえば、バケツにボトルとか釘をきつく締めずに遊びがある状態でたくさん刺すと“ジャーン”という響いた音になったり、缶にバネを張っただけでエコーがかかったように音が伸びる。加工することによって音が違ってくるから限りがないんですね。それと、叩いていくうちに缶がへこんできて音が常に変わる、変わっていく魅力というものもあります。こんなもの見たことない、聴いたことないだろう、というものをつくり出すのがすごく楽しい。みんな、僕の音を聴いてどんな顔をしてくれるのかな、ってね。

◆音楽は生活に密着した、身近なもの。
譜面が読めなくてもっと、自由な発想で楽しんでいい。

僕は、小・中・高と音楽の成績はずっと悪かったし、譜面が読めないんですけど(笑)、それでも音楽をやっている。音楽は体の中にあるものとか、生活に密着した部分の中でつくれるものだと思っていますから。だって、歩いているときはリズムをキープしているし、歩きながらしゃべったりしているじゃないですか。考え方によると、すでにそこで音楽をしている。つまり、朝起きてから耳に入ってくる音は全部音楽なんです。そういう見方で音楽をとらえ、小学生と組曲をつくったことがあります。神社で聞こえてくる音を表現するのに、絵馬が風に吹かれて木にあたる音を下駄と下駄合わせてつくった子がいたし、雨が降っていたので樋から雨が落ちる音を水を張ったバケツの中に石を落としてつくった子がいた。電車の音、住宅街の音なども同じようにつくって組み合わせて、すごくおもしろかったですね。これはもちろん、中学生にもできること。その音をどう再現するかという点ではかなしおもしろい楽器がつくれると思いますね。
 たとえば、朝起きるといつもラジオが鳴っているんだよね、という人は、ラジオの音とそれ以外に耳に聞こえてくる音を組み合わせてみるとか。必ずしもメロディーが必要とは限らない。

◆失敗とかダメと決めつけているのは自分だけ。
いろいろな価値観の人がいることを知ってほしい。

少しでも音に興味があるのなら、自分が思ったことをまずやってみたらいいと思います。やってみないと答えは出ないし、やってみたら発見もあると思う。失敗だとかダメだと決めつけているのは、結局自分だけ。自分で失敗だと思っていても、人はそう思わなかったりするものです。廃品を拾っていて思うんだけど、いらないから捨てる人がいるけど、捨てた物を見て、いいなあ、と思う人もいるわけで、いろいろな価値観の人がいることを知るべきですね。それと、人の目を気にしないこと。いかに人と違うものをつくれるか、ということを大事にしないとつまらないと思う。こういうラヘンな大人(笑)もいる、ということを知って貰いたいですね。