トモオフィス/廃品打楽器協会

「音のゆうびん」で山口ともの特集記事が掲載されました

otonoyubin 山口とも
雑誌掲載
時計2009年4月1日(水)

音のゆうびん 2009年春号に
山口ともの特集記事が掲載されました。

otonoyubin 山口とも

otonoyubin 山口とも

▼本文より

おもしろい音、未知の音をいつもさがしているんです
山口ともさん◎廃品打楽器奏者

山口ともさんは、「ともとも」の愛称で子どもたちにも大人気。廃品で楽器を作り、ユニークなパフォーマンスをくり広げる打楽器奏者です。全国各地で「ガラクタ音楽会」やワークショップを開催し、子どもたちとの音楽遊びの活動も続けています。オリジナルの楽器がいっぱいのアトリエを訪ねて、お話をうかがいました。

■音楽一家だったけど、ちっとも興味がなかった

うちは祖父が作曲家で、父がクラシックの打楽器奏者。レッスン室があって、祖父母が音楽教室を開いていました。祖父が「歌をやりなさい」って、兄弟3人で歌わされてね。無理やりさせられるのがいやで、いつも逃げていました(笑)。
父にはいろいろなコンサートに連れていかれて、「何かやりたい楽器はないか」と。「フルートがいい」と言ったら、さっそく父のオーケストラの団員の人に引き合わされたんです。でも教わって吹いたとたん、気持ちが悪くなって貧血で倒れちゃった(笑)。習ったとは言えないんですよ。訪問しただけ(笑)。

■ドラムからパーカッションへ

それからもちっとも音楽に感心がなかったのですが、高校3年生のとき、学園祭でバンドを組むことになって、「お父さんがプロなんだから、お前も太鼓叩けるだろ」って。家にはドラムセットはなかったから、太鼓を何個か寄せ集めて、叩き始めたのが最初ですね。
高校を卒業後、大学受験に失敗。「何かやりたいことはないのか」って父に言われて、「ドラムを叩きたい」と言ったら、探してきてくれたのが、つのだひろさんだったんです。そのままアシスタントになって、3年後にはひろさんのバンドでデビューしました。自分で楽器を作るようになったのは、フリーで活動するようになってからなんです。

■出したい音をイメージしながら、楽器を作る楽しさ

もともと物を作ることが好きでしたね。小学校の時、夏休みの宿題で船を作るという課題が出て、僕は木を削りだすところからこだわって作ったんです、おふくろがボロ布で作ってくれた帆を立ててね。結局バランスが悪くて浮かなかったけれど、手に入れた材料を工夫しながら物を作ることが、とっても好きでした。
それは今、楽器を作る時も同じ。例えばドラムセットを考える時、高い音、低い音、それぞれにどんな素材の、どんな形のものがいいのかイメージしながら町を歩いていると、思わぬものが見つかるんです。見つけたもので色の組み合わせを考えたり、どれで、どんな音を出そうかと考えていくプロセスがすごく楽しい。一度捨てられたものでも、みがいて息を吹き込むと、魂が宿るというか、愛着も生まれてきますよね。身体や感覚を使って楽器を作るという行為は、演奏にも反映されると思っているんです。

■音を見つけるのが楽しくて

音楽って、「音を楽しむ」ということですから、奏でる前の、音そのものに意識を向けてみることって大事だと思うんです。日常の中にあるいろいろな音に耳をすましてみると、思わぬ発見がありますね。例えば食器を洗っていると、水の音や陶器がふれ合う音、スポンジがこすれてキュッキュッと鳴る音など、いろいろな音が聞こえてきます。食器洗剤が残り少なくなった時、ペットボトルのおなかを押すとピーピー鳴る音、なんて、すごくおもしろい。一歳半の息子が遊んでいる時にも、「ちょっと待って。今の音、どうやって出したの?」なんて聞いていますね(笑)。おもしろい音、不思議な音、これだ!という音を発見したときはうれしくて、それをどうやって表現の中に取り入れていこうか、なんて、いつも考えているんです。

■僕はいつも即興演奏

例えばライブをするときも、事前の練習は一切しないんですよ。自分が持っている楽器の中からそのイメージに合うものを選んで、その場で料理する。即興ですね。決められたことを同じようにやっていると、僕自身が飽きてしまう。だから同じ曲でも、その時どきで使う楽器も鳴らし方も違うんです。
楽器のチューニングもまったくしません。ちゃんとした曲を弾かなければいけなくなってしまうのがいやなんです。音楽というと、ある完成した形じゃないと発表できないような感じがあるけれど、ガーッと適当に出した音のエネルギーが、そのまま曲になっていくというすばらしさもあると思います。

■子どもの目線から見えてくるもの

ワークショップでは、子どもたちと一緒に楽器を作るのですが、発想のおもしろさに驚くことも多いですね。子どもの目線に下がって物を見たり考えたりしてみると、見過ごしていたものを発見することもあるんです。
お父さん、お母さんにぜひ提案したいのは、子ども中心の日を作ってみてほしいということ。子どもに合わせて興味の世界を狭めてみると、今まで見えなかったものが見えてきます。僕も広く活動しているようでも、やっていることはみんな同じ。一人の人間にできることは限られているわけだし、あくせくしなくてもいいんだって思えてくるんです(笑)。