トモオフィス/廃品打楽器協会

月刊エレクトーン 2005年6月号に掲載されました

月刊エレクトーン
新聞・雑誌掲載
時計2005年6月6日(月)

月刊エレクトーン 2005年6月号に
山口とものインタビュー記事が掲載されました。

月刊エレクトーン

▼本文より

冴さまの部屋 第12回

カリスマプレイヤー”冴さま”こと、冴咲賢一がお客様をお迎えしてのトークコーナーです。テレビ番組「ドレミノテレビ」では子どもたちに人気。そして、昨年から安藤禎央さんとコラボレーションを行っている打楽器奏者・山口ともさんが今月は訪れてくれました。

テレビ番組でもおなじみの打楽器奏者”ともとも”こと山口ともさん。ユニークな風貌と廃品を使った個性的なパフォーマンスで人気のともさんが、その柔軟な発想の原点や現代の子どもたちの教育について、ときにシリアスに、そしてときにユーモラスに語ってくれました。

冴咲 ともさんは、いわゆる廃品を利用したパーカッショニストとして有名ですけれど、そもそも、廃品に芽を付けたきっかけはなんだったんですか?

山口 95年に、音楽劇「銀河鉄道の夜」の演奏を手がけたときが最初なんですよ。作品のテーマが、とてもメルヘンチックで宇宙観があるでしょう?だから、それに合う”宇宙の音”というのを求めていて、これは音を聴いて楽器の姿が思い浮かぶようなものじゃダメだなって。だったら自分で作ってしまえ、って思ったんですよ。

冴咲 そこから、あのスペーススプリングという楽器ができたと。

山口 そう。業務用の大きい空き缶2コの間を糸電話みたいにバネでつないで。ギターアンプにスペースリバーブという音があるんだけど、おおいうボヨヨ~ンという音を出せないかなって思ってね。

冴咲 そこからともさんの新しい世界が広がったんですね。それまでは、廃品打楽器は使っていなかったわけですよね?

山口 そうですね。ただ、プレイヤーとして”自分にしか出せない音”を持つということが、生き残っていくために必要だったという意識はずっとありましたからね。

冴咲 変わったものを見ると、叩いてみたいとか触ってみたいって思ったりします?

山口 ありますね~。車で走っていて、粗大ゴミとか道端にあると気になっちゃって。気が付くと車に乗ってるんですよ(笑)。だいたいどんな音が出るかを想像できるモノでも、意外な道具を使って叩くと意外な音が出たりする。例えば、しゃもじとか水道管とか。別になんで叩かなくちゃいけない、という規則があるわけじゃないんだから。常にどういう発想を持っているか、ですね。

冴咲 固定観念を持たないって、すごく大事なこと。そういうところから新しい音が生まれてくるんですね。

山口 あとは、どうやってモノから音を引き出すか、ですよね。音を他人に伝えていくには、叩き手が気持ちとイメージをしっかり持ってすべての楽器に触るようにしないと。

冴咲 よく経験や気持ちが音になるといいますけど、打楽器も”叩く”というシンプルな行為の中に、空気と匂いがありますものね。

山口 そう。だから打楽器はリズムしか作れないと思っている人もいるけど、海の音や風の音、そういう風景も表現できる。そういう引き出しを持っていないとつまらないですよ。

もっとヘンな面白い人が街中にいると楽しいと思う

冴咲 ちなみに、昨年からエレクトーンとのコラボレーションに取り組まれていますよね。

山口 いろんな音が出るし楽しいし、すごく可能性の大きい楽器じゃないですか。しかもプレイヤーさんの個性が思った以上にはっきり出てしまう楽器ですね。ちゃんと気持ちを持ってプレイしてくれていると、こちらにもビシビシ伝わってくるし。

冴咲 いろいろ遊べる部分もあると思うんですよ。例えば、エレクトーンが持続音であることをうまく利用したり、変幻自在な電子楽器の個性を使って絡むと面白いかなって。

山口 うん。例えば、安藤(禎央)くんとやっているステージは、即興をやったりするんだけど、そんなとき僕は、音色を変えるためには楽器を変えるわけだけど、安藤くんはパッとスイッチひとつで変えちゃって。ズルイ!とも思うけど(笑)、即興やってるとすごく面白い。

冴咲 ともさんの面白がる才能って、素晴らしいですよね。グループでの活動も、どれも本当にユニークで素敵なパフォーマンス!

山口 日本のちんどん屋文化を伝える”近未来チンドン御鳴ラ商会”とかね。”Black Velvets”というムードミュージックのバンドもあるんだけど、それはビッグバンドスタイルでね、当時のキャバレーとかで”無理矢理やらされてる感”も演出していたりして。

冴咲 憎いですよね~。あと、”Ticobo”では、すごいカツラで演奏されてますし。

山口 ビジュアル系なので(笑)。あれはヘルメットに穴を開けて、チューブをたくさん差し込んで作ったんですよ。やっぱりコンサートって聴くだけじゃなくて、見るものでもあるでしょ。見る部分でも何かを受け取ってもらいたいなと思うんですよ。

冴咲 じゃあ、今やトレードマークになっている独特のヘアスタイルも。

山口 うん。このスタイルが完成してから12、3年になるかな。部屋を出るときは必ずセットしますよ。こういうキャラクターが遊園地とかサーカスに行かないと見られないのってつまらなくないですか?昔はもっと街中に面白い人がいて、ヘンなヒゲ生やした人とかね、ああいう美意識をもっと大事にしたいと思うんですよ。

同じヤツなんてひとりもいない みんな違うから個性がある

冴咲 ともさんは、各地の学校に出かけて行って、子どもたちに音楽を教えたりという活動も積極的にされてますよね。テレビなんかで見ていても、子どもへの対応が見事だな、って感心するんですよ。盛り上げ方というか。

山口 小学校とか中学校で、実際に子どもたちに楽器を叩かせたり作らせたりするんですけど、そこで出てきたものは、なんであれその子自身の中から出てきたもので、何かしら絶対にいいところがあるから。それを拾ってあげると、その子はそこで発表したことを大切に思えるし。やっぱり自分から出てきたものを、自分が好きにならないとダメ。

冴咲 間違えたところを指摘するだけのレッスンってありますよね。逆に言えば、間違えなければOKという。

山口 それはもう絶対にダメ。出る杭は打たれる、っていうけど、僕は杭が出まくっているような世の中であっていいと思う。「みんなと違うのはイヤ」という子がいるけど、本当は同じヤツなんてひとりもいないんだ、みんな違うんだ、ということをきちんと教えないと個性なんて育たないですよ。僕自身は、子どもの頃から人と同じことをやるのはつまらなくて好きじゃなかったし、今自分の子どもにも「他人と同じことはするなよ」って言ってますよ。

冴咲 そういう意味でともさんのワークショップは、ペットボトルや身近なモノを使って、自由に個性を発揮できるというところがいいんでしょうね。

山口 それに、今はこういう変な大人の見本がないからね。いい見本がないから、子どもたちは何になりたいかわからないんですよ。だから僕のパフォーマンスを見て、こいつらが何か感じてくれれば、って。難しいですけど、将来を信じてやっていきたいですね。

冴咲 応援します!それでは、そんなともさんに最後の質問を。ともさんにとって”愛”とはなんでしょうか?

山口 その人に対して、なんでもしてあげられることじゃないですかね、躊躇なく。

冴咲 なるほど。今日は本当にいろいろなお話をありがとうございました。