読売新聞 2010東京ホットぷれいすで廃品打楽器が特集されました
2010年11月7日
新たな音拾い集め 廃品で奏でる宇宙
▼本文より
使い古した風呂おけ、穴の開いた一斗缶、エアコンのダクト…。それらが音楽を奏で、リズムを刻めば、もはやごみではない。立派な楽器だ。
廃品で楽器を作って演奏するのは、目黒区在住の打楽器奏者山口ともさん(52)。10月3日、渋谷区の代々木公園のステージに並んだ楽器に観客の目はくぎ付けになった。
「これ、どんな音が出るんだろう」。そう言って、業務用トマトソース缶に金属のバネをつなげた糸電話のような楽器を手にした。「ヒュイーン、ヒュイーン…」。バネをひっかくと、SF映画の一場面のような不思議な音が響きわたり、観客から歓声があがった。
1995年、宇宙をテーマにした劇で打楽器奏者の演奏を務めたのがきっかけだ。既製の楽器では表現できない「宇宙の音」を自分で作ろうと、次々と新しい素材を試すうちに「廃品」に行き着いた。ごみの再利用だからエコにもなる。
古いフライパンや車のホイールカバーで、それぞれの音質や音程の違いを生かしてドラムセットを作った。見た目はガラクタでも丈夫で、新品には出せない絶妙な音を奏でた。
それを知った目黒区大岡山で鉄工所を営む渡辺隆さん(55)は驚いた。山口さんは時々訪れては鉄の切れ端などの廃品を拾っていく。「まさか楽器にするなんて」。今では、どんな楽器に生まれ変わるのか楽しみで仕方ない。
廃品打楽器の楽しさは「こんな音が出るんだ」という発見だという。ペットボトル、チラシ紙、ビニールの切れ端も楽器になる。幼稚園や小中学校でも教えるようになった。「もっとほかにないかな」。今日も新たな音を探している。
(写真と文 栗原怜里、読売新聞)