つくばエクスプレス沿線情報誌 Sawawa
2007 vol.11 3月号に山口ともの記事が掲載されました。
▼本文より
自由な発想で、純粋に音を楽しむ
トレードマークの斬新かつ前衛的スタイルでにっこり微笑む山口ともさんは、数々のアーティストのツアーやレコーディングに参加するパーカッショニスト。そして、廃品に命を吹き込む廃品打楽器奏者でもある。ともさんが廃品からオリジナルの楽器を作るようになったのは12年前。
「95年に『銀河鉄道の夜』という音楽劇を担当したときにこの芝居の装置や内容、衣装を考えていたら、既成の楽器ではない不思議な音、なんの音だろうと思わせるものを作りたいなと思ったんです。既成の楽器だとなにを叩いているか想像つくじゃないですか。だから楽器以外で音の出るものを何でも叩いてみて、自分の音楽に必要だなと思われる音色や音程を集めていったんです」
-音を求めてどこまでも-
身近なものを試し終えたともさんが次に目を向けたのは外。
「業務用の一斗缶とかね、小学校の給食室の外によくゴミででますよね。あそこでこういうゴミが出るんだなとか、そういう目で歩いていると街が楽しくなっちゃう。いろんな発見があっておもしろいし、作ってみないとどういう音がするのがわからないのが廃品楽器のいいところですね」
組み合わせの妙でどんどん音色が変わっていく。そこには既存のものにはない楽しさがある。
「地球上に存在しているすべてのものに音があるんですよ。そう考えたらなんでもいいんだなぁって」
ともさんが作る楽器にはドレミの音階がない。発泡スチロールのトロ箱に銀杏や楠、どんぐりの枝を置いた木琴のような楽器はその都度並びが変わる。ガラスの板もそう。材料もどこで切るかも気分次第。ともさんいわく「インスピレーション」。きれいな音だなと思える楽器ができたらOK。正解も不正解もない。はたして目の前にある楽器からはどんな音がするのだろう?ごろりと並べられた枝を叩くと、琥珀色のモルトウイスキーのようなまろやかな音が鳴った。無造作に並べたガラス板からは憂い湛えた湖面のような音が繊細に響く。どれもが思いもよらない美しい音を持っていた。
「こうじゃなくちゃいけないとか、このやり方はこうだよねとか、形にはめてるのは自分なんです」
廃品打楽器奏者としての活動を通して、モノに対して自由な見方ができるようになったと同時に、世の中のいろいろな物事もオープンにみられるようになったというともさん。
「いいね、すごくいいよ」
楽器を作る子供たちに向けられたその言葉に掬われるのは、きっと子供だけではないだろう。