トモオフィス/廃品打楽器協会

NaO 2004年7月20日号に掲載されました

NaO
新聞・雑誌掲載
時計2004年7月29日(木)

カントリープレス刊 NaO 2004年7月20日号
MUSIC PICK-UP INTERVIEWに山口とものインタビューが掲載されました。

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▼本文より

ガラクタに命を吹き込む打楽器奏者
パーカッショニスト 山口とも

NHK教育テレビで再放送されている『ドレミノテレビ』をご存知だろうか。UA扮する歌のお姉さん“ううあ”と何でも楽器にしてしまう謎のパーカッショニスト“ともとも”が、音楽の楽しさを伝えてくれる小学1~2年生向けの番組だ。楽曲の完成度の高さ、多彩なゲスト、制作陣の顔ぶれなど、子どもだけでなく大人に受けた番組は、大いに話題になった。

その“ともとも”こと山口ともさんが、ワークショップ開催のため池田町創造館にやって来た。準備が進む会場の一角には、ドラムセットらしきものが据えられ、楽器らしきものが並んでいる。なかにはどうやって音を出すのかわからないものもある。これらはすべて、ともさんが廃品から作り上げたオリジナル楽器なのだ。

ともさんは童謡作家を祖父に、ティンパニー奏者を父に持ち、自身も1980年に「つのだ☆ひろとJAP’S GAPS」の一員としてデビューしている。解散後はフリーのパーカッショニストとして活躍し、95年の音楽劇『銀河鉄道の夜』への参加をきっかけに、廃品からさまざまなオリジナル楽器を作るようになったという。

 「宮沢賢治さんの独特の世界の中で、最初は既成のパーカッションで演奏してたんだけど、稽古して、だんだん内容がわかってくるうちに、なんか違うなって。何を叩いているかわかんないもの、それはどうしたらいいかなって思って、作ってみようかなって。そっから始まった」

燃えないゴミの日などを見計らって、目に付いた物はとりあえず拾って来る。そして、どう組み合わせるか、どんな音が生まれてくるか、まずは叩いてみる。そして手を加えられて、ゴミは楽器へと変身を遂げる。

 「作ったものは自分の音、この世界の中に一個しかない音だから、それは自分の個性として、この音を持っているプレイヤーとして、ほかの人たちにも認識される。既成の楽器っていうのは、叩き方を変えることでしか、その雰囲気を変えることはできないけど、(オリジナル楽器は)作る時点から携わっているので、限りなくいろんなことができちゃう、その魅力に取り付かれたってことですかね」

一度は捨てられた道具が、その役から解き放たれ、楽器として生まれ変わる。道具そのものが持つカタチの美しさ、そこから生まれる音によって、新しい存在価値を得ていく。

「きれいに磨いたり、成形し直したり、色目を揃えたり。それは楽器を作るところでの最低限のマナーっていうか・・・、やっぱりビジュアル系なんで(笑)。拾ってきたものに別の命を吹き込んであげることによって、ゴミだったものが、また別のものに生まれ変わって、人目に触れる、人の耳に入るっていうことは、素晴らしいこと。それをエコロジーだって言う人もいるし、そういうイベントに呼ばれるときもある。僕にとっては後からくっついてきたことなんだけど」

廃品打楽器によるパフォーマンスを繰り広げるともさんの活動が、やがて『ドレミノテレビ』出演へと繋がった。さまざまな楽器を操るとも酸を見ているだけでも、音楽の楽しさが十分に伝わってくる。

「身近に落っこっているゴミばっかりじゃなく、音楽もすごい身近にあるものなんだってことを伝えたい。ペットボトルの中にちょっとものを入れるだけで楽器になっちゃうんだよ、それに合わせて歌を歌えば、もう音楽をやってることになるっていうこと、それが一番伝えていきたいことです」

手をかけて生み出された楽器は、味わい深い存在感を放つ。でも楽器としては、少々荒っぽい、雑な音しか出せない。だからこそ、そこに込める思いが大事だと、ともさんは語る。

「打楽器ってすごいデリケートなもの。この音を出すことに自分が気持ち良さを感じて、みんなに聴いてもらいたいって思って叩かないと、意味がない。人を泣かすことだって、踊らせることだってできる、そのくらい気持ちがストレートに入ってしまう楽器だと思います。生まれてから一番最初にやること、叩くことへの本能が(人間には)ある、って思いますよ」