トモオフィス/廃品打楽器協会

教育音楽 2005年9月号で山口ともの記事が掲載されました

教育音楽
新聞・雑誌掲載
時計2005年9月6日(火)

教育音楽 2005年9月1日発行 中学・高校版、小学校版に
山口ともの記事が掲載されました。

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▼本文より

不思議の音楽の国へ

第21回<東京の夏>音楽祭2005
「ともとものおとのもと~ゴミから音楽&星くずコンサート」

「UAの童謡コンサート~うたううあ~」

今年の<東京の夏>には、親子で参加できるイヴェントが二つあった。NHK教育テレビの音楽番組「ドレミノテレビ」で全国的におなじみとなった<ともとも>(山口とも)の「ともとものおとのもと~ゴミから音楽」というワークショップと、同じく「ドレミノテレビ」にうたのお姉さんとして出演した<ううあ>(UA)の童謡コンサートだ。この二つのイヴェントに5歳になったばかりの娘と参加した。

夢中になって楽器作り

まず、7月17日の<ともとも>のワークショップ。日本科学未来館の壁一面がガラス張りになった開放的な部屋にさまざまな廃材が所狭しと置かれていて、入っただけで子どもならコーフンしてしまうような空間が用意されていた。楽器作りを手伝ってくれるお兄さんお姉さんも10人ほどいて、鉄パイプまで切ってもらえるコーナーも用意されていた。

ゴミから音楽というタイトルのついたこのワークショップでは、子どもたちが日常的に周りにある素材を使って、それがどんな音として響くものか自分の耳で確かめて、新しい楽器を作るというものだ。僕自身、世界の伝統音楽や民族音楽を紹介するコースや即効演奏を行うアンサンブルのクラスなどを教えてきたので、子どもたちに楽しく教える難しさはよく分かる。まず子どもたちにちゃんと面白さが伝わって、楽しくできるキャラクターが必要だが、誰もができることではない。今回参加した子どもたちは4~5歳ぐらいの年代がいちばん多かった。この年代の小学生は教えるよりも、特に楽器作りの場合には手先もまだ器用ではないし集中力も低いので、より気をつかわなければならない。

ともさんは見事にそれをこなしていた。スタッフは一緒に考えアドヴァイスをくれ、木や金属のピースをそれぞれ違う長さに切ってくれた。娘は木や金属をたたいたときの音色の違い、ペットボトルに小さい石を入れるかプラスチックの宝石のおもちゃをいれるかによって音色の違うシェイカーができることなどを一つひとつ体験していった。楽器ができると、ともさんは、全員の楽器を他の子どもたちと一緒に見に行き、話をする。木で作った楽器はアフリカのマリンバ系の楽器に似ている響きがし、叩き方によってはインドネシアのガムラン・オーケストラのような音に聴こえる。僕の娘が作った楽器には「ガムランみたいだね、エスニックな音だ!」と言ってくれた。娘は<ガムラン>の言葉の意味は全くわからないのに、納得して誇らしそうだった。

音楽の魅力に引き込まれる

夜は最後に子どもたちが自分で作った楽器で出演する<星くずコンサート>だ。
20分ぐらいメロディーやハーモニーもない、まるでサイケデリック・バンド、グレートフル・デッドのミッキー・ハートか、現代音楽の作曲家シュトックハウゼンがやっていたような即効演奏が始まった。とはいえ、ちょっと変わったかつらをかぶって子どもたちを笑わせたり、合間のアドリブや説明でエンターテインすることによって彼は子どもたちの興味をずうっともたせていた。子どもたちも昼間似たタイプの楽器を作って音には慣れていたし、後で自分たちも同じように自作の楽器を演奏することもあり、みんな前のほうに座ってちゃんと聞いていた。

日常的な素材から気に入った楽器を作ることができるうえ、メロディーやハーモニーも取っ払った、音楽の本質的な部分を学ぶことができる。これは子どもたちにとってはとても重要なことだ。頭は年と共にどんどん固くなってゆく。4~5歳の時からこういった経験を楽しく学ぶことによって音の感覚が広くなる可能性がある。こうしたことはこれからの音楽教育に最も必要なことだと思う。山口ともさんは話術やキャラクターの力も大きいが、何よりも彼自身の楽器製作や演奏の楽しみっぷりが、子どもたちを楽しませて、ぐいぐい引き込んでいた。